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きれいになれる Essay 集
 
「美のしらべ」
  『夏の夜の花火と浴衣』(毎日新聞 2000.08.02)
     暑い夏の夜。全国各地の水辺では花火大会が盛んだ。数々のイベントと組み合わせて「納涼」の冠をつけられた大会は、老若男女を問わず人気である。

 打ち上げ花火大会の醍醐味は、ドドーンパッパパッという大きな音とともに夜空で華やかに咲き乱れる色とりどりの花火、それに負けじと弾ける若い女性の浴衣姿との競演ではないだろうか。

 着物を着なれない女性でも、気軽に装えるのが浴衣である。最近では、デザイナーズブランドの粋な柄物も登場して、浴衣も選びやすくなった。古典的な柄も、紺地に赤の鞠やパステル調の矢羽根模様など、可愛らしさを演出できるものもあり、個性的な浴衣の着こなしが見られる。

 洋服のコーディネイトとちがい、バッグや下駄に少し大胆な色や柄を選ぶことができるのも良い。浴衣の柄の一色をとって合わせると落ちつくが、思い切って差し色を持ってくるのも楽しい。そう、浴衣の装いは見た目にも楽しめるのである。

 浴衣には、涼しげなまとめ髪を合わせたい。多少短めの髪でも、エクステンション(つけ毛)を活用して襟元をすっきりさせ、うなじを強調するときれいである。基本は、タイトに髪をまとめ毛先を散らす、メリハリのあるスタイルである。頭の上部までねじり上げた髪をピンでおさえ、広げた毛先を小さな飾りピンでとめていくだけで、打ち上げ花火に負けない華やかさが演出できる。後ろ姿の美しさも、浴衣スタイルには大切なポイントである。

 私たちは、意外性のあるものや非日常的なものに心引かれる部分を持っている。次々に咲く花火の色と形が予想外であったとき驚きとともに感動させられるのと同じく、普段見られない印象を持つ浴衣姿の女性にもハッとさせられる。この両者が共存する花火大会では、一瞬にして消える花火の美しさと、いつもとはイメージの異なる浴衣姿の女性の美しさという二重の美が醸し出す「非日常」の美のしらべがある。命の短い花火に対して、女性の意外性の美しさは再現可能であるという相違はあるけれど。

 「花火大会だから浴衣を着て出かけよう」と手間を惜しまない心意気が、その人を美しくさせる。その気持ちがあれば、日常的にも美しさに対して努力できるし、なにより楽しむことが美への第一歩なのだから。

(荒木 りえ)



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