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「眉を直してください」。訴えかけるその目は真剣そのものである。私がスタッフを務めるインターネットの化粧情報関連のサイト主催で、メイクアップサービスのようなイベントを開くと、待ってましたとばかりにこのリクエストが殺到する。綺 麗になりたい女性たちにとって「眉」は悩みの代表である。
眉はもともと持って生まれた体の一部。でも多くの女性は、その眉をどう扱っていいのかわからないという。たしかに、眉は少し手を加えただけで顔全体の表情をがらりと変えてしまう。しかし、「眉を直してほしい」という要望は、実は、どういうことをすれば自分を「綺麗」に見せてくれるのかわからないという、曖昧な心の迷いを表しているのではないだろうか。 そもそも、美の基準は人それぞれの心の中に漠然とあるもので、はいこれがそうですと他人に指し示せるようなものではない。しかし、美しくなりたい人は、その美を、自分自身を変えることで実現できるはずだ。だから今の自分をよく見て理解して、美しくなれる一歩を自ら踏み出さなければならない。それは、向上心を持つというような大げさなものでなく、好きだからできる小さなことの積み重ねから始まるだろう。 たとえば、好きな化粧品を毎日使うこと。化粧品は道具にすぎないが、肌にのせた途端、すっと奥に消えてゆき、その後、瑞々しい弾力が手のひらに返ってくるのを実感できたとき、その化粧品を好きになるし、その行為が楽しいと思えるようになる。化粧品がただの道具でなくなる瞬間だ。さらに、自分を慈しむ気持ちがあれば、肌を両手で包み込み、いたわることが苦にならない。そう、自分を好きになることも大切な要素なのだ。 メイクアップサービスで、私が眉をちょっぴり描き足すことで輝くような笑顔を見せてくれる女性たち。綺麗になった自分を見つけた彼女たちが、今まで悩みの種だった眉を愛おしく感じているのがわかる。ちょっとしたことが、自分を好きになるきっかけになる。 よくメイクアップアーティストと間違われるが、実は私の本業は大学教員、しかも専攻は経済学である。それがなぜメイクや化粧品なのかと驚かれることも多いが、私は「好きだから」と応えることにしている。 (荒木 りえ) |
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