「美のしらべ」(毎日新聞00.05.10)
『シックなスニーカーに惹かれて』
元来運動するときに履くための靴であるスニーカーだが、ファッショナブルなものを見つけると、とても嬉しくなる。機能性は運動靴としてのものを備えながら、色やデザインが、運動靴というより、まるでファッションのためだけに存在するような美しいスニーカーのことである。
ひとつはアメリカで購入した「DKNY(ダナキャラン・ニューヨークの略)」のコンパクトなスニーカー。たった35ドルだったこの靴にとても惹かれた。ポイントカラーとなっているグリーンの色がビビッドで、編み上げたレース(靴ひも)の感じが端正で、「運動のため」だけではない上品さが感じられたからだ。
もうひとつは、「nobox」というスペインのブランドのスニーカーである。かかと部分が最低7センチはあるソール、つま先の高さは1センチほどなので、いわゆる厚底ではない。そして、なんといっても、つま先が細く丸い形で、そこだけ見るとまさかスニーカーとは思えないデザインである。裾の長いブーツカット・パンツなどに黒い「nobox」を合わせると、そのままパーティにも行けそうなシックな靴。赤いラインが差し色の、ソールに高さのあるものは、紺のブレザーなどに合わせてスクールガール風ファッションが手軽に装える。私は、この「nobox」を黒、白、赤&白のコンビと三足も買い揃えた。どれも7千円までのお手ごろ価格である。
カジュアル・ファッションがジャンルとして確立されている昨今、きちんとイメージをつくれる靴があってもおかしくない。しかし、実際には「いかにも」の運動靴を合わせている人が多いし、少しお洒落なものをと思うと、途端にスポーツテイストを失ってしまう。履くだけで脚を美しく見せてくれるパンプスとはちがい、運動靴を適度なバランスでファッションに取り入れるのは、意外にむずかしい。しかしコーディネイトによっては、ローファーではなく、やはりスニーカーを履きたいのだ。だから、「足元をおしゃれにしてくれる運動靴」の存在は貴重である。
残念なことに「nobox」はスペインでもすでに製造されていないとのことで、二度と手に入れることはできない。「DKNY」のシューズは、ニューヨークで探しても、もう同じものは見つからないにちがいない。「レア」なシューズを大事に履きたい。その一方でどんな新しいモノに出会えるのか、スニーカー探しがとても楽しくなってきている。
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