「顔の見えない誰かと」-2
私は、もともと化粧品が好きだったので、化粧フォーラムというところはとても楽しい場所だった。自分の知っている情報が他の人の役に立ち、また自分も興味のある情報を得ることができる。通信そのものを楽しむというよりも、通信の中身が魅力的だった。顔の見えない相手と「顔」に関する話をするというのは奇妙な感じがするが、文字情報を自分の立場で取り込んで適用していくという作業はそれほどむずかしいことではない。解説が具体的であれば、逆に、たとえば写真を見せられるよりもはるかにわかりやすいということがあるのだ。フォーラムの中で、新しい情報を発信し、質問者の悩みに答えたりしていくうちに、その私の情報は、ネットに蓄積され他の媒体からも注目を浴び、いつの間にか電子の世界から実体のある世界へと引きだされるようになったのである。
化粧情報にとって、実体のある世界でのコミュニケーションが意味を持つのは、「メイクアドヴァイス」など「顔を見るからこそ可能な」イベントのときである。化粧品の使い方やメイクの仕方を、それぞれの人の顔に合わせて個別にアドヴァイスするわけだが、これが大変な人気である。単にその場できれいになれるというだけでなく、それまで私が文字で発信していた情報が、顔の上で具体化されたとき一層色彩を放つということなのだそうだ。いかにそういった情報が必要とされているか、実感できる。電子の世界の情報があるからこそ、実体を見せられたときに役立つのである。
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