「美を奏でるもの」-3
「自分をよく知っていてそれを表現することが上手」な人になることは、たやすいことではない。いくら真似をしても、中山美穂さんや松嶋菜々子さんになれるわけではない。表現すべき「自分」がちがうからである。ヘアスタイルや服装を真似ても魅力的にならないとすれば、そこに原因があるのではないだろうか。もちろん、素敵だと思える人を観察して小物の合わせ方やヘアスタイルの作り方などテクニックを学ぶことは楽しいし、とても役に立つ。でも、それだけでは何かが足りない。
たとえば、メイク、ヘアスタイル、ファッションといった三次元で「美」を考えたとき、その三次元でトータルなバランスがとれてこそ美しさを演出できる。顔形、肌質、肌色、目鼻立ちなどをしっかり理解していないとメイクは成功しないし、髪質を知らなければヘアスタイルはきまらない。背が少し高かったり低かったりするだけで、服装のバランスが簡単に崩れてしまう。顔の雰囲気と合うヘアスタイルでなければ、どんなに流行の形にしても変になる。今やメイクとファッションのコーディネイトは当たり前のように語られる。メイク、ヘアスタイル、ファッションだけでも、相互に関係しあうことは明らかだが、それに加えて、性格や生きる姿勢など内面の要素が絡み合い、「美」を奏でるものは実に複雑である。
このように考えてくると、マンハッタンで見た多様な美のありさまは当然といえる。肌の色や髪の色が美の基準になりえない現代で、生まれ育った土地が異なり生き方が異なる人たちが、それぞれの特徴をいかして内面を表現すれば、さまざまな美が現れて当たり前である。ヒスパニック系の女の子が、褐色の肌を計算に入れて暖色系のエスニック・ファッションに身を包み、しっかりとカールしたまつ毛にたっぷりのマスカラを重ね、長い髪にウェーブをかけて、サンダルの素足に口紅と同じダークブラウンのペディキュアをのぞかせている姿には、他の誰にも真似できない美のハーモニーが感じられる。グレーのピンストライプのパンツスーツを着こなすブロンドのミディアムボブのビジネス・ウーマンは白い肌にボルドーの口紅が映える。自分だけのトータルバランスのポイントがどこにあるかを見つけたときに美が引きだされる。
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その4